
こんにちは!VOC事務局です。
コスト削減やリソースの拡張など、オフショア開発には多くのメリットがありますが、それに伴うリスクもしっかり把握しておく必要があります。
そこで今回は、オフショア開発で直面する可能性のある5つのリスクとその対策について解説します。
本記事の最後にはオフショア開発におけるリスクを管理するための実務向けチェックリストもご用意しました。
本記事が、オフショア開発を検討する際の助けになれば幸いです。
この記事はこんな方にオススメ!
- オフショア開発におけるリスクを把握しておきたい
- オフショア開発が失敗しないための対策を知りたい
0.オフショア開発に潜む5つのリスク
近年、開発コストの削減や人材確保を目的として「オフショア開発(海外委託開発)」を導入する企業が増えています。
一方で、国内開発とは異なる多くのリスクが存在するのも事実です。
オフショア開発に潜む主なリスクとして、「コミュニケーションリスク」、「品質管理リスク」、「プロジェクト管理リスク」、「セキュリティ・法的リスク」、「チーム運営・モチベーションのリスク」の5つがあります。
次の章から5つのリスクと対策について詳しく解説します。
1.コミュニケーションリスク
実際にオフショア開発で最初にぶつかる壁として、コミュニケーションの問題があります。
オフショア開発は海外にいる外国人エンジニアと仕事をするので、基本的には英語、もしくは現地の公用語でやり取りする場合があります。
近年では日本語が分かるエンジニアも増えてきていますが、いずれにせよ片方、またはお互いに外国語を使ってやり取りをすることになります。
そうなると起こりうるのが、発注側と請負側の「認識の祖語」です。
これによって仕様の誤解や手戻り、納期の遅れなどが発生してしまう恐れが出てきてしまいます。
また日本と他の国との文化や考え方に違いがあります。例えば日本独自の曖昧な表現(「いい感じに」や「うまい具合に」など)は海外では通じず、具体的に指示された内容だけ作業するので「思った仕上がりと違う」といったケースがままあり注意が必要です。
これらコミュニケーションリスクへの対策としてまず有効なのが、「ブリッジSEの活用」です。
日本側と現地スタッフとのパイプ役としてプロジェクトの初期から関与・支援してもらうことで、オフショア開発をスムーズに進めることができます。
特に日本文化と現地文化の両方に理解があるブリッジSEを活用することをお勧めします。
そしてやはり、「こまめなコミュニケーション」と「指示の明文化の徹底」をすることで、コミュニケーションリスクは大きく減らすことができます。
ドキュメントは図解で説明し、主観的な表現はなるべく減らすことが大切です。
また定例ミーティングなどを実施し、逐一連絡を取り合うことで、認識の齟齬を大きく減らすことができます。
2.品質管理リスク
オフショア開発では、成果物の品質が期待通りでない、あるいはばらつきが大きいという問題が発生しやすくなります。
その原因の一つに、「開発スキル・経験のばらつき」が挙げられます。
近年は中国やインド、ベトナムなどの技術力が高まり、クオリティの高い開発ができる一方、国によってはまだ優秀なエンジニアが多くは育っていないところもあります。
また同じ開発社内でも、メンバーごとのスキルに大きな差があることがあります。
安価なエンジニアは、初級者である場合も多く、設計糸を理解できないまま実装されることもあるので要注意です。
その他の原因として「品質に対する価値観の違い」があります。
「納品できる=品質OK」と考える文化と、「動作+メンテナンス性+テスト済み=品質OK」と考える文化では、完成品のレベルが大きく異なります。
さらに「工程管理の違い」から、品質に大きな影響を与えることもあります。
開発企業によっては、単体テストや結合テスト、UIテストなど、どの範囲までテストするのかが明確でないことがあり、またテストデータやテストケースが適当だったり、形式的なテストで本質的なバグを見逃すケースも存在します。
これらの品質管理リスクへの対策として、「品質定義の明文化」や「コードレビューの義務化」などが挙げられます。
テスト範囲、レビュー基準、パフォーマンス要件などを契約前に文書化し、コーディング規約・命名規則も共有することで、品質管理リスクを低くすることができます。
また経験豊富な日本側エンジニアがチェックする仕組みを整備することで、品質管理の甘い部分を早い段階で見つけ、修正することができます。
3.プロジェクト管理リスク
オフショア開発では、物理的な距離や組織の違いによってプロジェクトの進捗状況や品質をコントロールすることが難しくなる傾向があります。
結果として、納期の遅延、コスト超過、品質不良といった問題が発生しやすくなります。
主なリスク要素としてまず、「進捗の可視化が困難」であることが挙げられます。
オフショア先の作業がリアルタイムで把握できず、手遅れになってから問題が発覚するケースがあります。
また仮に定例ミーティング等があっても、詳細な状況や遅れの原因が正確に共有されないこともあるので注意が必要です。
「責任の所在が曖昧」であることも、プロジェクトを大きく遅らせる要素の一つです。
問題が起きたときに、「誰が何をすべきか」が明確になっていないと、解決までに時間がかかってしまいます。
特に、複数の国や組織が関与していると責任分界が複雑になりやすい。
これらのリスクは、「プロジェクト管理ツールの導入」で大きく減る可能性があります。
JIRA、Trello、Redmine、ClickUpなどを活用して、タスクや進捗の見える化を徹底し、誰が何をいつまでにやるのかを明文化、チーム全体での共有をすることが大切です。
これらの指揮管理も、橋渡し役である「ブリッジSE」が取り仕切ってくれると負担が少なくすみます。
そのため活用するブリッジSEには技術力だけでなく、マネジメント・文化理解のある人材が望ましいです。
4.セキュリティ・法的リスク
海外とのやり取りでは、情報漏洩や知的財産の保護に関するリスクも無視できません。そしてこれらは、「起きてからでは遅い」タイプの問題です。
コストやスピードに目を奪われず、最初の契約とセキュリティ体制の整備に十分な時間と予算をかけることが、オフショア開発成功の鍵となります。
まず真っ先に気を付けなければならないのが、「機密情報・個人情報の漏洩」です。
オフショア先の開発者に業務を依頼する際、顧客情報、設計書、ソースコード、社内ドキュメントなどの機密情報を共有する必要があります。
この情報が第三者に漏洩する可能性が常につきまといます。
また、成果物の著作権・所有権が不明確なままだと、後になってトラブルになることがあります。
中には、開発者が作成したコードを別のクライアントにも流用していたというケースもあります。
オフショア先の国によっては、知財保護や労働契約に関する法律が日本と大きく異なる場合もあり、また訴訟時に不利になりやすい構造的リスクも存在するので注意が必要です。
これらのトラブルを回避するためにも契約時は慎重になる必要があります。
NDA(秘密保持契約)や業務委託契約を日本語・現地語の両方で明文化し、著作権・所有権の帰属をしっかりと契約書で明記しておきましょう。
紛争時の裁判管轄(例:東京地方裁判所)を契約に記載しておくと、トラブルが起こった際も自国の裁判所で行うことができます。
5.チーム運営・モチベーションリスク
最後に「チーム運営・モチベーションのリスク」について解説します。
このリスクはオフショア先の開発者が、プロジェクトに対する当事者意識や一体感を持てない状況になることで発生するリスクです。
「要件を渡して終わり」という関係性だと受け身になりやすく、受け身で消極的な開発姿勢が根付いてしまいます。
問題やリスクの報告もせず、最後にまとめて「爆弾」が帰ってくることもあります。
また成果に対する評価や感謝の言葉がないとモチベーションが維持しづらく、やりがいや成長機会を求めて他社へ転職してしまう「離職リスク」まではらんできます。
海外ではスキルアップやより好条件を求めて転職することは日本よりも一般的なので、ナレッジが蓄積されず、プロジェクトの品質も不安定になってきてしまいます。
これらのリスクを少しでも減らすために、チームとして「巻き込む」仕組みづくりが大切です。
ビジョンやゴールを全員に共有し、仕様や設計に対して意見を聞く場を設けることで、やりがいと主体性が高まります。
また定期的に成果や良い点をフィードバックすることで、個人をちゃんと見ていることを伝えてあげましょう。
KPIやMBOなどを活用し、成長を可視化・報酬に連動させる仕組みも検討してみても良いでしょう。
6.まとめ
いかがでしたか?
オフショア開発においては、何事も「現地任せ」にしてしまうと様々なリスクを回避できず、後戻りコストが非常に大きくなってしまいます。
本記事で紹介した5つのリスクとその対策を押さえておくことで、トラブルを未然に防ぎ、オフショア開発を成功へと導くことが可能になります。
ポイントは「相手は外注ではなくパートナー」だという意識を持つこと。
技術だけでなく、信頼関係づくりこそが成功の鍵です。
最後に、ここまで読んでくださった方に、本記事で取り上げたリスクを管理するための実務向けチェックリストを以下にご用意しましたのでご活用ください。
【参加企業募集】ベトナムオフショア視察ツアー
一般社団法人ベトナムオフショア開発協会では、「ベトナムオフショア視察ツアー」を開催します。
現地のオフショア企業4社を訪問し、最新の開発技術、経済動向、未来予測に直接触れる貴重な機会です。
ハノイ・ホーチミンの現地企業・技術者との交流や街歩きも予定しています。
初めてのオフショア導入検討にも、既存体制の見直しにも、「行く価値のある視察」をお約束します。
下記フォームよりお気軽にお問い合わせください。お待ちしております!
お問い合わせフォームはこちら